河越城救出戦　〜１５４６年

　河越の合戦は、織田信長の桶狭間の合戦や毛利元就の厳島の合戦にも匹敵するぐらいの合戦と言われている。２００７年の大河ドラマ『風林火山』において、おそらく初めてＴＶドラマ化され、その中でも言われていたが、おおよそ８万を超える足利晴氏、上杉憲政、上杉朝定の連合軍が武蔵の国の河越城（城主は北条綱成）を攻略するため兵糧攻めをしていたところ、相模の国の北条氏康が８千の軍勢を率いて救援に向かい、天文１６年（１５４６）の４月２０日に氏康は夜襲を決行し、油断しきっていた包囲軍は大混乱に陥り、上杉朝定が討ち取られ、北条軍の大勝利となった。その後北条の関東支配がいっそう強まり、勢力を飛躍的に伸ばしたとされている。
実際にこれだけの兵力差があったかは信憑性はかなり乏しい。 　またこの合戦が夜襲であったかも疑問視されており、その原因はこれだけの大合戦にもかかわらず、史料が少なく、夜襲としているのは『喜連川判鑑』しかないからだ。
　ただし、天文１６年の４月２０日に河越城の救出戦があったことは事実でまたこの合戦で上杉朝定が戦死したことも現存する史料からまず間違いはないみたいですが、その他８万の軍勢であったとか、合戦の詳細についてはそのまま信じることが出来ないのが現状のようです。

　まず総勢８万以上と言われているが、実際は１万５，６千から多くて２万４，５千程度の軍勢であったと思える。
この合戦のもともとのきっかけは関東にて勢力の拡大を続ける北条氏に危機感を抱いた古川公方の足利晴氏、関東管領の上杉憲政、河越城を奪われた上杉朝定が、北条氏の拡大をくい止めるために起こしたと思われる。しかしながら個々の兵力では太刀打ちできないために３者は協力し、また背後の今川氏も抱きこんだと見るのが自然だと思われる。
　また河越城の篭城軍は約３千程度と言われていることから、同盟軍の兵力は２万ぐらいと言うのが妥当であろう。包囲は半年近くに及んだと言われていることから、見物人や兵隊相手に商売する者も意外と多かったと思うから、見た目にはそれ以上の兵力にも見えたかも知れない。

　包囲軍がどのような配置で包囲していたかというと、城の南、砂久保というところに足利晴氏、松山方面の北西に上杉朝定、西の柏原に上杉憲政が陣を構えていたらしい。

　氏康が河越城へすぐに救援に向かえなかったのは、西の大国の盟主であった今川義元と敵対していたことが大きかった。 しかし交渉は難航したものの、今川と和睦することが出来、ようやく動きがとれるようになり、天文１６年４月に早速、河越城の救援に向かった。精鋭約８０００といわれている。
そして氏康は足利晴氏が陣取る砂久保の近くに到着した。
　１０月から包囲を開始したとされているから、約半年経っている。もし本当に８万の軍勢だったなら、簡単に力攻めで落城したと思う。いくら油断、慢心があったとはいえ、それだけの兵を駐屯させておくには費用も馬鹿にならない訳で・・・。また、兵力差も歴然としているにもかかわらず、力攻めもしないとなると士気にもかなり影響するはずである。
　それらを考えてもやはり約２万というのが妥当であるように思う。

氏康は早速行動を開始。仮に２万程度であったとしてもやはり連合軍が兵力では優位であるから、それなりに慎重な攻めが必要になる。
　言い伝えでは夜襲で蹴散らしたとしている。確かにそれもあり得ない話ではないが、夜襲は同士討ちの危険や、誰が手柄を立てたかなどがよく分からないはずで、河越合戦以外ではあまり夜襲というのは行っていない。小部隊によるゲリラ的な夜襲はあったろうが、大規模に行えるものではなかったものと思われる。

となるとオイラは朝駆けをしたのかなと思う。夜中に砂久保から隠密に移動し、夜明けとともに柏原方面の上杉憲政の陣、松山方面の上杉朝定の陣に突撃をし、味方が優勢と見るや城から北条綱成も大手門より足利晴氏の陣に突撃。見事連合軍を打ち破ったというのが真相のような気がする。